登場する主な落語

「おせつ徳三郎」
店の娘のおせつと、奉公人の徳三郎がいい仲になっているらしい。
そのことを花見のお供をした小僧から聞き出そうとする主人だが、小僧も簡単には口を開かない。そこで、休みや小遣いを増やすことを餌に少しずつ口を開かせることに。調子にのったおしゃべり小僧は全て話してしまい、カンカンに怒った主人は徳三郎に暇を出す。(花見小僧)

暇を出され叔父さんの家に預けられた徳三郎は、おせつが婿を取り婚礼が行われることを知り、おせつの婚礼の席へ乗り込もうと刀屋へ。「とにかく切れる刀が欲しい」という徳三郎を怪しんだ刀屋の主人は事情を聞き出し説得する。そこへ、おせつが婚礼の席から逃げ出したと聞き、店を飛び出す徳三郎。両国の橋で出会った徳三郎とおせつは「あの世で一緒になろう」と、二人で手に手を取り「南無妙法蓮華経」と唱えながら川に飛び込むが…。(刀屋)

「宮戸川」
大好きな将棋に夢中になって父親から締め出しを喰ってしまった半七。一方、隣家の船宿のお花も帰宅が遅くなり母親から締め出しを喰ってしまう。
半七は近くに住む叔父の家に泊めてもらおうとするが、行き先のないお花も、駄目だという半七の後を付いてきてしまう。
早合点で思い込みが激しいと有名な叔父は、若い二人をみて案の定勘違いをしてしまう。布団が一組しかない2階へ案内される二人。
帯で仕切りをして小さくなって背中合わせで眠ることにしたのだが…。

「紙入れ」
「今夜旦那が帰らないんで」とお得意先の奥さんに誘われた新吉。旦那には大変世話になっているから行けようにないが、奥さんにもずいぶんひいきにしてもらっているから行かないわけにも…と弱り果てる新吉。迷いながらも旦那の留守宅にあがりこんだ新吉はお酒を飲み床をのべてもらったその矢先…急に旦那が帰ってきてしまう。慌てて裏口から飛び出した新吉は、旦那からもらった紙入れをうっかり置いてきてしまったことに気づく。しかも、紙入れの中には奥さんからの手紙も入っている。絶体絶命の新吉は翌朝再び旦那のところを訪れる。
旦那は気づいてそしらぬ顔をしているのか、それとも気づいているのか? それを確かめたくて、新吉は昨夜の一部始終を「知り合いの話」として、旦那に話してゆくのだが…。

「駒長」
借金ばかりなのに呑気な亭主の長兵衛。毎日来る借金取りに辟易する女房のお駒。取れないとわかっていながらも毎日通ってくる損料屋の丈八はお駒に惚れているに違いない、と考えた長兵衛は、芝居を打って丈八を騙し、懐にあるお金をそっくり巻き上げてしまおうと企む。お駒が丈八に惚れているという手紙を書かせ、その手紙をお駒が落としたところを長兵衛が拾い、丈八が来る頃合いを見計らって夫婦喧嘩を始める。丈八が来たら、間男の証拠とばかりに手紙を見せて脅し、懐のお金をそっくり巻き上げるという寸法だ。嫌がるお駒を相手に芝居の稽古を始める長兵衛。そしてついに丈八が来て計画が実行されるが、お駒が想定外の行動に出たために…。

「三年目」
病に伏せった女房は、次々と医者に見放され、自分の命が長くないことを悟る。だが、死の覚悟はできているが、ただひとつだけ、夫が後添いを取ることが気がかりで臨終ができないという。そこで旦那は、「生涯独身で通す。もしも後妻を持つような時には、婚礼の晩に幽霊となって出てきたらいい。」こんな約束をして女房は息を引き取った。
時が経ち、案の定周りから後妻の話がもちあがる。断り切れずついに婚礼の晩。旦那は女房の幽霊を待つがなかなか出てこない。五日経ち、十日経ち、二十日経ってズウッと待ったが出てこない。「ばかにしてやがらぁ。今のこの女房をかわいがったほうがいいや」と、新しいおかみさんを一生懸命かわいがることに。そして再婚して三年が経ち、先妻のお墓参りに行った夜中に、ついに先妻の幽霊が現れる…。

「唐茄子屋」
吉原通いが過ぎて勘当を告げられた若旦那。だが、お天道様と米の飯はどこへ行ってもついてまわると、あっさり家を出てしまう。早速吉原に行くが相手にされず、あっちこっちと居候してまわるが遂にどこも行くところがなくなり、吾妻橋から飛び込もうとするところを偶然、叔父さんに止められる。
一晩ぐっすり眠った若旦那は、翌朝、天秤を担いで唐茄子売りに行かされる。遊ぶことしか知らない若旦那は重い天秤棒を担ぐのもやっと。つまずいた拍子に荷を放り出し日陰に倒れ込んでしまう。そこへ通りかかった職人が、知り合いに次々と売りつけてくれる。
残り二つになり軽くなった天秤を担ぎ歩き出したが売り声も出ない。 売り声の稽古をしながら誓願寺店を通ると品は良いが見た目に質素なおかみさんに声をかけられる。事情を聞くと亭主からの送金もなく、ここ二日ばかり何も食べていないという。若旦那は、唐茄子を差し出し、「おまんまだ!」とせがむ子供に弁当をやり、売上げ金も全部渡して振り切るようにして帰ってきてしまう。
ことの顛末を最後まで聞き不振に思った叔父さんは、「確かめるからそこへ連れて行け」と、提灯を持って立ち上がる。
二人が誓願寺に着いてみると、長屋では大騒動。若旦那が渡したお金を大家が取り上げてしまい、おかみさんは首をくくってしまったという。怒った若旦那は大家の家に怒鳴り込みにいく…。