それぞれに「えっ?」と思うことがあったG2演出

――須藤さんは『キャンディーズ』でG2と最初の舞台でしたね。

須藤 まだ舞台に立つことを怖がっていたころで、とにかく無我夢中でした。自分ではなんにもできないで、最後にG2さんがバッと修正してくれて、舞台に立たせてもらったという気持ちが強いんですよね。自分から出すものが何もなくて、今から思うと、すごくG2さんの頭を悩ませただろうなって……。その後の『JAIL BREAKERS』のときには、みんなでアイデアを出し合って、いろいろと出てきたものをG2さんが最終的に調節しておもしろく仕上げてくれるっていうやり方だったので。『キャンディーズ』のときは、相当迷惑をかけたんだろうなって、今、思いますね。G2さんの最後の仕上げ方がすごいんです。それまでは、稽古場で、みんなから出てくるものをすっごい楽しんで見てくれてるんですけど、本番前の最後の1週間になると、その段階をアップさせていく。芝居ができていくし、できたと思ったらさらにおもしろくなっていく。毎日どんどん楽しくなっていく、って感じでしたね。

――小西さんは『The Light in the Piazza』ですね。

小西 これぞミュージカルって作品で、しかもイタリア人とアメリカ人の恋の話で、僕はイタリア人の役だったんですが……なかにイタリア人の家族がまるまるイタリア語をしゃべってるシーンがあるんですよ。台本をもらって、とりあえずキャストでやってみよう、と、やったときに、G2さんはずーっと黙ってるんですよ。どうなんだろうと思いながらやっていて、ひととおり終わったときにG2さんが言ったのが「なに言ってるのか、さっぱりわからない」(一同爆笑)。「あなたが用意した台本ですけど」みたいな感じだったんですけど……最初は、歌と、ちょっとなれないイタリア語といった特殊な部分から稽古が始まったので、演出が始まったのは中盤からですね。こうしろ、ああしろ、ということをキツくは言わない人なので、なにか、ふわーっと、やんわりと、うまく導かれて気づいたら本番前にそこにいた、という感じで。信頼感があったからできたんでしょうね。僕は、舞台経験がそんなに多くないですし、ミュージカルもたくさんやっていたわけではないので、いろんなプレッシャーを感じてはいたんですけど、すごく楽しいものにしてくれた……だから稽古期間はすごく充実してました。

――戸次さんは、『MIDSUMMER CAROL〜ガマ王子VSザリガニ魔人〜』の再演で……

戸次 G2さんは、それまで演劇雑誌とかで見る、写真でしか知らなかったんですよ。動いてるG2さんやしゃべってるG2さんを、見たことがなかった。サングラスをかけていて、絶対怖い人だと思ってたんですけど、こんなに見た目の印象と中身のギャップの激しい人はいないですね。雑誌の取材で初めてお会いしたときに、開口一番「よろしくお願いしまーす」って言われて、なんてまろやかな人だろうと思いましたね。稽古場でも、その人柄が表れた演出法で、「なんだ、いい人じゃん」って、僕にしてみりゃ、勝手な肩すかしだったんですけど(一同笑)。僕へのオーダーはそんなに細かくなくて、あんまりイジメられなかった感じなんですよ。どっちかというとマゾっ気があるほうなんで、ちょっとそこがもの足りなくて(一同笑)。役者として鍛えてもらわなかった感があったので、この前、G2さんとお会いしたときに、立ち方とか位置とか細かいことでもビシビシ言ってくださいと言ったら、「わかった。今度はそうするわ」と言ってくれたので、非常に楽しみにしてます。

――今回、『ガマ』のときの吉田鋼太郎さんもご一緒ですね。

戸次 うれしいですね。すごく尊敬する舞台役者さんで、また、公私ともにお世話になっているので……

――公私の「私」でもおつきあいが?

戸次 彼女のいない僕のために、飲み会を開いてくれたりしてね(一同笑)。もうねえ、この人には一生付いていこうって……ホントに「こういう大人になりたい」って思いましたね。いいところだけ吸収して、悪いところは反面教師として(一同笑)。

どれだけハードルが高いのかもわからない

――キャラクターの濃い役者さんが集まりましたね。

須藤 本当によくこんなキャラクターが集まったなぁというキャストの方々と、物語で描かれている人たちも、全員が生き生きとしていて。そのみんなが、からみあいながら、人間関係が動いていくじゃないですか。それが台本の時点でおもしろいので、やっぱりハードルは高いな、と思いますね。おもしろくならなかったら、自分のせいだな、って(笑)。そのプレッシャーは、台本を読んだときに感じましたね。昔、テレビで見ていたドリフターズのコントのように、「あそこにお金があるじゃない」ってお客さんはみんな気づいているのに、舞台上の人たちだけが、どうしよう、どうしようってあたふたしている。そういうお客さんとの一体感がある舞台が、今回、絶対できるって思ってるんだけど、できなかったらどうしよう!(一同笑)

戸次 「志村、うしろー!」の世界ですね。

須藤 ホントにそう。「お金、あの子が持ってる!」ってね、みんながわかってるのに、舞台上の人だけがわかってない。特に(小西演じる)文七とかね。(小西に向かって)そういう"志村"の役だから……

小西 プレッシャーかけないでくださいよ(一同爆笑)。








『キャンディーズ』
2005年作品
とある石けん工場を舞台に、戦前・戦後2つの時代が交差して描かれる職人たちの情熱と恋の物語。須藤がヒロイン役を熱演。




『JAIL BREAKERS』
2006年作品
無実の罪で監獄に入れられた銀平(松岡昌宏)は、真実を暴くため仲間を集め脱獄計画を進行する。それはバンドを組んでロックフェスに出場するというもので…!? ロックあり、アクションあり、ノリノリで楽しめるコメディ快作。






戸次 記者会見で松尾(貴史)さんが「人間動物園」なんておっしゃってましたけど、こういう異種格闘技戦のような座組みって大好きで、「俺はこんなことできる」「私はこれができる」っていうのを、「うわー、この人すげー」って稽古場で見ているのが好きなんですよ。

須藤 見てるだけ?(一同笑)

戸次 基本的に見るほうが好きなんですよね。ただの演劇ファンなんですよ。やっと最近、自覚が芽生えてきて、今回、諸先輩方の芸を吸収する意気込みで望みたいと思っていますけど、こういうカンパニーにポンと入った瞬間は、見ているのが楽しいってほうが強くなっちゃうんです。見るにはおもしろい人が、そろってますからねー。

小西 今回は、いろんなジャンルでお芝居を続けていて、それぞれになにかを築き上げている方が参加されているので、あんまり怖がらずに、勉強させてもらおうって、気楽に考えているんですけど(笑)。ただ、題材の落語には全然なじみがなくて……ちょっと前に(桂)小米朝さんの落語を見たときに思ったのが、本を読んでるときのようだなと。舞台で一人の人がやっているんだけど、その人が発する言葉から、いろんな想像をするわけですよね。長年落語を見ている人にとって、たとえば文七というのは、どういうキャラなんだろうとか……今回、落語家がそれぞれの感性でつくりあげて、見る人がそれぞれに想像しているキャラクターになるということが、どれだけハードルが高いことなのか……落語の世界の実写版に、自分がなるということに未知の恐怖はありますね。

ホントはなにも抱えずに、笑って見ていたい

須藤 なるほどねー。こういう声だったのか、とかねー。すごーい。そういうことを言いたかったのよ、私も。

戸次 今の小西さんの話は、戸次がしゃべったことにしといてください(一同爆笑)。今後の取材にも、僕の意見として使わせていただきますので。

須藤 そうそう(笑)。

小西 稽古中に飲みに連れて行ってください。それでチャラということで(一同笑)。

須藤 そうだねー……今まで落語がつくりあげてきたキャラクターをね……また、上がっちゃった、ハードルが。

小西 あああ。あんまり言うとプレッシャーに……(柳家)花緑さんに聞くことがたくさんあるんだろうけど、その聞くことすら思い浮かばなくて、ちょっと下準備しなくちゃって思ってるんですけど。

須藤 台本だけで、十分伝わるぐらい、もうキャラクターは仕上がってる感じなので、私は千葉(雅子)さんが書かれた台本に忠実にお久をやります。

戸次 そうなんですよね。今やる仕事は台本にあるわけですからね。それを演出家の言うことを聞いて、アンサンブルをつくっていけばいいと思うんですよ。よく元のネタがあるものとか、再演ものとかあるじゃないですか。絶対見ないんです。見たら、モノマネになっちゃう。『ガマ』のときは本番に入ってから初演のDVDを見たんです。それでだいぶ落ち込んだんですけどね(笑)。最初から捕われたくないので、あんまり見ないんですけど、今回はいろんな落語が元になっているということで、その世界観を勉強しとかなきゃなーとは思ってはいるんですけれど。でも、あくまで知識として見とこうという感覚で、それを踏襲した勝五郎にしようとは思わないんですよね。

須藤 G2さんが、最後には絶対に仕上げて、舞台に立ってもいいよ、っていう状態にもっていってくれるので、絶対大丈夫って安心してます。でも、(戸次と)2人の部分はかなり重要なので、がんばらないといけない……

戸次 はい。ビシッとセリフを入れてきますんで。

須藤 フフフ。私も、育児との両立がんばります。

戸次 (子どもを)連れてきてくださいよ。

須藤 チョロチョロされてたら、集中できない(一同笑)。




『MIDSUMMER CAROL
〜ガマ王子vsザリガニ魔人〜』
2008年作品
とある病院を舞台に無垢な少女と偏屈な老人が紡いだ感動のものがたり。
05年の公演を皮切りに映画化、ノベライズ、アニメと一大ムーブメントを引き起こした『ガマ王子』が再び舞台に。意図的に演出が変更された08年版『ガマ王子』で新たな世界の幕が開かれる。


小西 僕、すごい恥ずかしい話なんですけど、ストレートのお芝居はほとんど初めてなんです。前回はミュージカルだったので、G2さんも演出をつける割合が少なかったと思うんですよ。がっちりお芝居をつけるG2さんを見たことないので、ただただ楽しみです。僕もキビシくされるのが好きなので、ぜひバンバン言ってもらいたいなと思ってます。でも、言われるまでもなく、今回はほかのキャストの方のお芝居を見て、毎日、へこんだりするんだろうなと思ってますけどね……吸収していかないと、と思ってます。

戸次 稽古してて、すごくへこむメンバーがそろってますね、ホントに。

小西 僕も見ていたいんです、ホントは。ただ見て、なにも抱えずに笑っていたいんです。

須藤 西岡(徳馬※徳の字は旧字)さんと吉田さんの製作発表のやりとりだけでも、おもしろいですもんね。

戸次 で、松尾さんがからんできてね(一同笑)。

須藤 ヤバイね。

戸次 ヤバイっすよ。ホント、今回は見ているだけでいいですか?(一同爆笑)

日本に生まれて『江戸の青空』を見ないって……

――地方公演も、北九州をはじめ、広島、大阪、名古屋、札幌……

戸次 札幌に来たときはもう、僕はイベンターと化しますからね(一同笑)。僕が店の予約をして、タクシーも配車して、運転手さんにも「ここからこう行ってください」って言って……もう、使命だと思ってますから。

須藤 でも、北海道をTEAM NACSの人たちと一緒に歩けないですよ。一人に見つかると、ビャーって……

戸次 そんなことないですよ。

須藤 うん、ちょっと大げさに言った(一同爆笑)。でも、ホントそうだった。

戸次 いや、でも札幌公演はおまかせください。

須藤 それは楽しみー。

小西 僕は、札幌、仙台は行ったことないんですよ。

戸次 僕、仙台も詳しいですよ。わりと行くんですよ、公演とかイベントとかで。

須藤 へぇー。仙台はプライベートではあるけれど、公演は……(急に思い出したように)私、新潟の公演、すっごい好きなんです。お客さんがホントにすてき。「地球ゴージャス」で新潟行ったときに、感動して涙が出そうになるくらい、すっごく温かく迎えてくださったんですよ。だから今回、新潟公演って聞いて、すっごいうれしいって思って。

小西 北九州もいいですよねー。

戸次 サラリーマンが「もう一度、単身赴任したい土地」ナンバーワンですからね。1位が福岡、2位が札幌なんですよ。

須藤 へぇー。それは男子的なことじゃないの?

戸次 ま、それもあるし(一同爆笑)、あとやっぱメシですよね。

小西 メシですよね。八百屋で買った野菜がホントにおいしいんですもん。

須藤 食べ物の話しか、してないね。

戸次 やっぱり土地回る最大の楽しみはねー……(急に声のトーンが変わって)もちろん、土地のお客さんに会うっていうのもありますけれど。



『The Light in the Piazza』
2007年作品
アメリカ南部の女性マーガレットが娘のクララを連れ、かつてハネムーンで訪れたイタリア・フィレンツェへやってくる。クララはそこでファブリツィオというイタリアの青年と出会い、あっという間に恋に落ちるが、この二人の恋がきっかけでさまざまな人間模様が浮かび上がり…。
小西はファブリツィオ役を演じた。
人生の深淵にまで切り込んだ傑作ミュージカル。

小西 言わされたみたいな感じですね(一同笑)。

戸次 ……公演が終わった後は、食べ物がやっぱり大事なとこですよね。

須藤 飲み代かかるね、きっと。たいへんだ(一同笑)。

――最後にみなさんにメッセージを……

小西 落語を知らない人でも絶対楽しめますので、それは気にしないで観に来ていただきたいですね。

須藤 なんにも知らなくても大丈夫ですよね。

戸次 だいたい落語を知らない人間が、何人かやってますからね(一同笑)

須藤 そうそう(笑)。

戸次 僕もまったくわからないんで……勉強しますけど(笑)。

須藤 落語の登場人物って、生きたキャラクターっていうか、ウソっぽくない感じがするんです。いとう(あいこ)さんが言ってましたけど、落語の舞台となっている古きよき時代を楽しんでもらいたいですね……見ないと損、ですよね。

戸次 いやあ、大丈夫ですかね、見ない人は。なんにも楽しいことないじゃないですかねー。やっぱり日本に生まれて『江戸の青空』を見ないっていうのは(一同笑)。心配ですよ、その人たちに何の娯楽があるのかって(一同爆笑)。

須藤 言いすぎ、言いすぎ(笑)。

戸次 いや、そういう意気込みでやらせていただきますので、ぜひ劇場に足を運んでください。


 

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