今回演じる柳田格之進は、俺の役者歴の中で一番難しい役になるかもしれない(西岡)

――今回の舞台で、西岡さんは“柳田格之進”という役を演じられるわけですが。

西岡 実は俺、この柳田格之進みたいな役って今までやったことがないんだ。だからたぶん、俺の役者歴の中で一番難しい役になるかもしれない。テレビでも一度「西岡さん、これは普通のお父さんでいいですから」って言われたことがあるんだけど。“普通のお父さん”っていうのが一番難しいんだよ。

吉田 ハハハ! でもホント、そうですよね。

西岡 ヤクザとか兵隊とか、デフォルメしたものならいくらでもやりようがあるんだけど、普通っていうのが難しい。一番僕が不得意なところかも。いつもは台本を読んだときにだいたいこんな感じってイメージが浮かぶものなんだけど。今回はこんな堅物で融通がきかないマジメな男を俺は一体、どうやってやればいいんだろう?って悩んでて。

吉田 ククク。早いですね。

西岡 いつもは、自分に内在しているものを引っ張り出してやるんだけど、俺には柳田格之進みたいなところが一切ないんだよ。

G2 ハッハッハ! そうか〜、面白いな。まぁ今回は、このはっきりいってイカツい俳優お二人がいかに笑いを生み出すか、しかもイカツさは残したままでっていうのが、僕が一番楽しみにしているところなんですよね。

西岡 うん。そこはきっと、面白いことになると思うなあ、俺も(笑)。

――吉田さんは、今回の千代田卜斎という役柄についてはいかがですか。

吉田 いや、実は台本をもらったのが一昨日でして、現時点ではまだきちんと読んでいないんですよ(笑)。









『魔界転生』
2006年作品
宮本武蔵(西岡徳馬)をはじめとする死せる剣豪達が魔人のチカラを携えて蘇る。その陰謀に立ち向かう剣豪・柳生十兵衛(中村橋之助)、決死の死闘の数々。
山田風太郎の同名小説を舞台化。壮大なスケール感にケレン味いっぱい、笑いいっぱい、人情たっぷり! G2流アクション大作
G2 じゃ、鋼太郎さんへのレクチャーがわりにちょっとここで説明させてもらいましょうか。もともと僕は、今回の脚本に組み込まれている演目のひとつでもある『井戸の茶碗』がすっごく好きでして。これは、侍同士がくず屋を通して仏像を売買するんですが、その仏像の中からなぜか五十両が見つかったから話がややこしくなる。普通は取り合いになるところが逆のトラブルで、武士のプライドと意地があってお互いにその五十両を受け取らないと言い張り、あいだに入ったくず屋が困り果てるという噺なんですが、この意地っぱりで頑固な侍二人を演じてもらうには、お二人しかいないと思って今回オファーさせてもらったんです。

吉田 ほお、そうなんだ。

G2 で、この関係を軸にしつつ、その二人の武士の役柄プラス、徳馬さんには『柳田格之進』という別の落語の主人公のキャラクターを背負ってもらい、鋼太郎さんのほうには『三軒長屋』に出てくる剣術の先生を重ねてみて。しかも、その千代田卜斎が実は武士じゃなくて単に講談師のおじさんが偉そうにしていただけだったという、オリジナルの脚色を加えてあるんです。

吉田 ククク。つまり、実のところはすごくインチキな男なんだね。

G2 そう。確かに『三軒長屋』に出てくる剣術の先生も、元講談師なんじゃないの?っていうくらいのインチキさは元々あるしね。だけど、このおじさんたちのメインストーリーは我ながらよくできていると思いますよ。屈折した二人のおじさんが、お互いに新しいものを見つけるというような、一本の筋が通っていてね。そこをまた千葉さんがうまいこと、あまりセリフにはしていないんだ。

西岡 ほお。

G2 だから、芝居のしどころはすごくあるんじゃないかな。

西岡 うーん。やっぱり難しいなぁ。

吉田 面白そうですよ。とりあえず、今は早く台本が読みたい(笑)。

西岡 だけどさ、今、そういうオヤジって、いないじゃない? 頑固で、いっぺんやったものはやったもんだから返してもらわなくて結構だっていうのはさ。俺なんか「あ、そう? じゃ返してもらおうかな」ってすぐ返してもらっちゃうけどな。

G2吉田 ハハハ!

『芝浜』を初めて聴いたときは「スゴイ!」と思って、ちょっと泣いたりもした(吉田)

――そもそも、みなさん落語はお好きですか?

西岡 うーん、最近は寄席に観に行ったりすることはないねぇ。








『MIDSUMMER CAROL
〜ガマ王子vsザリガニ魔人〜 』
2008年作品
とある病院を舞台に無垢な少女と偏屈な老人が紡いだ感動のものがたり。
05年の公演を皮切りに映画化、ノベライズ、アニメと一大ムーブメントを引き起こした『ガマ王子』が再び舞台に。吉田鋼太郎は大貫老人役を演じ、新たな『ガマ王子』を描き出した。

吉田 俺も、しばらく行っていないなあ。

G2 俺の場合は、上方落語は若いころからよく観ていたんですけど。この『江戸の青空』をやるにあたって、改めて江戸落語を観なきゃと思っているのに、どうにも東京では落語会へ行くという生理になりにくくて。芝居や映画は観に行くのに、落語にはなかなか行けなくて。脚本を作っている途中でも、花緑さんに叱られました。「あまりにも江戸落語を知らなすぎる」って(笑)。

吉田 へえ、そうなんだ。

G2 「まずは、CDでいいですから、これを聴いてください」って、リストをくださって。でも、それを聴いたことで今回はかなり助かりましたね。

――西岡さん、吉田さんにとって、落語の思い出というと?

西岡 僕の子供の頃は、娯楽といえばまだラジオの時代だからさ。大人がラジオで落語を聴いて笑うんだけど、子供にはその面白さがわからなくてね。だから最初は「落語って、どこがおかしいの?」って不思議な感覚だったな。落語の面白さって、子供には難しいかもしれないよね。

G2 なんせ、バカな大人のお話ですから。

吉田 俺も、落語は耳から入ったほう。今もテレビよりCDで落語を聴くほうが多いね。やっぱり落語って“観る”というより“聴く”って言っちゃうな、どうしても。ラジオやCDで聴くほうが、集中するし。たとえば間ができたりすると、その間にぐーっとみんな耳を傾けたりする。「今、どういう間なんだろう?」って。語りだけ聴くほうが、頭の中には情景が見えてきやすい気がするね。

――好きな噺や、好きな落語家さんはいらっしゃいますか?


吉田 『芝浜』を初めて聴いたときには「スゴイ!」と思って、ちょっと泣いたりなんかもしました。俺が聴いたのは、確か圓生さんだったと思う。やっぱりラジオで、ずーっと聴き入ってしまって。結構長い話なんですけど、最後までまったく飽きずに聴きましたね。一時、落語を、凝るまではいかないけどいろいろ聴いていた時期があって。だけど寝る前に聴いていると、どうしても途中で眠っちゃうんだよね。

西岡 ハハハ!

吉田 だから、オチを知らない噺がいっぱいある。

G2 ハッハッハ!

西岡 それ、なにが面白いんだろう(笑)。

G2 落語を、音楽として聴いてるんじゃないの?

吉田 そうかも(笑)。だって結構、耳に心地いいもんじゃない? 上手な人ほどさ。

お二人とも揃ってコワモテの俳優だけど、実は見事なほどに好対照ですよね(G2)

G2 だけどさ、こうして話しているだけでも、この両者って歴然と違うじゃない?

――確かに、そうですね(笑)。

G2 徳馬さんの場合は、どう演技するかを事前にちゃんと考えてから稽古にいらっしゃる。一方、鋼太郎さんは、セリフはきちんと入れてらっしゃるんだけど、とにかくやっちゃえ〜って感じなの(笑)。どんなプランを練ってるんだろうって最初のうちはこっちも探るんだけど、だんだんと、あ、きっと考えてないや、この人って。

吉田 ハハハハハ! よくわかってるね。

G2 だけど「鋼太郎さん、もうちょっとここはこうしたほうが面白くないですか?」って言うと、「おお! おお!」って、納得してすぐにその通りにやってみせてくれる。

西岡 へぇ〜、そうなんだ?(笑)

G2 対して、徳馬さんはこっちがどうこう言う前に、もっと深いところまで考えてきているから「いや、それはすでに考えたけど、あそこはこうしたほうがよりよくないか?」って、理論が完全に出来上がってるタイプなんですよね。

――ということは、両極端なお二人なのかもしれないですね?(笑)

西岡吉田 ハハハ!

G2 そうそう(笑)。ちょっとコワモテの俳優ということでは揃って同じグループにされそうなお二人なんだけど、実は見事なほどに好対照なんですよ。で、その徳馬さんが今までの役柄とは一味違う、ある意味“がんばれない”役を今回はやらなきゃいけないわけで。でも、僕は素材としては当てはまると思うんですよ。実際、普通に今こうしている徳馬さんって、意外とあのキャラクターに近いというか。

――はい、そういう気がします。

G2 でしょ。でも、ご本人はたぶんそのことに気づいていない。だから、徐々にそのことに気づいていっていただく稽古期間になるんじゃないかと思うんですが。

 
西岡 ふうん、そうなのかな。だけどさ、最初にもらった台本は途中までだったんだけど、それを読んでいるときは「これ、すっげー面白い!」ってワクワクして「この続きはいつ読めるの?」って感じだったんだ。それで「今度の芝居はぜひ観に来てよ!」って大勢に声をかけていたのね。でも一昨日、最後までできた台本を読んだとき「俺がやるこの役、難しいじゃん!」って改めて気づいて。だから今は「これ、みんなに観に来てもらっても俺、大丈夫だったかな?」ってなんだか怖くなってきた状態なんだよ。

G2 いやいや、もっと言いまくって大勢の人に観に来てもらってくださいよ!(笑)

西岡 まあ、G2が最後にはなんとかしてくれるとは思ってはいるけどさ。

G2 実は、徳馬さんには途中までの台本も早くからお送りしていたんだけど、鋼太郎さんには送ってなくて。

吉田 うん。そういえば、それはもらってないね。

G2 徳馬さんは読まないと納得していだけないだろうから、とりあえず中途半端ですけど片鱗だけでもってことで先にお渡ししたんです。だけど鋼太郎さんには「こういう感じのものをやるんだけど」って口で言うだけで「面白い、やるやる!」って引き受けてくださったから(笑)。

吉田 ハッハッハ! 確かにそうだったかも。

G2 ほら、もうここでもハッキリとお二人の違いが出ていますから。やっぱり好対照!

西岡 ハハハ、本当だね(笑)。

 

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