1. かつて「うねるような客席」で見て、憧れた舞台を
2. 熱量のある役者陣と、あたたかくて熱くてやさしい演出家
3. それなりの年齢になったからこそ、見せられるもの

1. かつて「うねるような客席」で見て、憧れた舞台を
  
——この「劇団500歳の会」に参加することになったいきさつは?
千葉
 来年、再来年に50歳を迎える同級生、というか同い年の演劇仲間が集まって、昔見た、東京ヴォードヴィルショーの『いつか見た男達』をやりませんか、というお声掛けをいただいて、その声に賛同して「おお、やろうじゃないか」と。ホンはある。じゃあ演出家はどうするか、って話になったときに、われわれがラブコールを福原さんに送ったんです。
  
  
——福原さんは、その時、どう思いました?
福原
  覚えてないんですよ(一同笑)。最初、誰から話を聞いたのかな……
千葉
 けっこう、ポツポツみんなで連絡したからね。「ちょっとこんな話あるんだけど」って、私も山西(惇)さんも、こそこそ電話したり。
  
——どうして「こそこそ」?
千葉
 なんか、自分が福原さんと仲がいいってことをアピールしたかったんですよ(一同笑)。山西さんはわかりませんが。みんなが「福原さんからOK出たぞ」ってネタを持ち帰りたかったのかもしれない。
福原
 話を聞いて、楽しそうだな、って思ったのと、役者さんに力があるのでーー「力がある」ってエラそうな言い方になっちゃいますけどーー安心する部分と、やだなー、こわいなーっていうのを同時に思いましたけど(一同笑)。まぁ、そこでビビってても、しょうがないんで、やるしかないのかなーって。こわいけど、断る理由が何もないんで……これ、俺、やるしかないんだ、って複雑な気持ちでした。
  
——最初から『いつか見た男達』という作品は決まってたんですね。
千葉
 われわれ世代の演劇の原点に、80年代にものすごい勢いがあった大先輩の劇団の残像がしっかりあって、あの芝居を観て、芝居をめざしたという共通体験がありましたので、この作品をやるということに賛同できました。
  
——どういうお話なんですか?
千葉
 もともと東京ヴォードヴィルショーで上演された作品は、役者の魅力に寄り添ったホンというか、役者・佐藤B作さんが、石井愃一さんとか、魅力ある仲間たちへ向けての愛あるメッセージということにつきると思うんです。そういうのが根本にあるところが大好きだったし……話は、あまり複雑な物語があるということではなく、同級生に再会して、変わらぬ思いを叫ぶ、という話だと思うんですよ。東京ヴォードヴィルショーのは、30歳半ばか前半の男達が再会する話ですけど、われわれのは50歳ですからね。(役についても)おのずと積み重ねてきた年月について、考えないといけないな、と思っています。
福原
 僕は、映像で見たんですけど、お客さんとの信頼関係なのか、うねるような客席で、劇場でこういうキャッチボールがあったんだな、っていうのが、ちょっとうらやましいなと思いましたね。客席が映っているわけではないんですけど、なんか、のめり込んで笑ってるのが、笑い声でわかりますからね。最近、なかなかないですから。これをやらなきゃならないのか、と背筋が伸びましたね。
  
 
——「うねるような客席」が今、あまりないのはなぜなんでしょう?
福原
 わかんないです。笑いの量だけで言えば、芸人さんのライブなんかで、ネタ振りから客がずーっと笑ってて、なにも聞こえないというライブはいっぱいありますけど……あのころのは、舞台上から投げてる熱量がすごい。それをお客さんが打ち返しているっていうか、すごいテンションで客席と舞台でラリーをしている。僕も熱量がある芝居が好きですけど、あんまり熱量があると、お客さんがバタンって倒れちゃったり(一同笑)、そこに行くまでに引いて逃げちゃうのかもしれないし、僕の力不足で、お客さんをガシッてわしづかみにする前に、スルって逃げられてるのかもしれないですけど。僕は映像を見て、そのアツさが残ってて、それさえ残ってれば、話は全部変わってもいいって思ってるぐらいです。


1. かつて「うねるような客席」で見て、憧れた舞台を
2. 熱量のある役者陣と、あたたかくて熱くてやさしい演出家
3. それなりの年齢になったからこそ、見せられるもの