1. かつて「うねるような客席」で見て、憧れた舞台を
2. 熱量のある役者陣と、あたたかくて熱くてやさしい演出家
3. それなりの年齢になったからこそ、見せられるもの

3. それなりの年齢になったからこそ、見せられるもの
  
——福原さんから見た千葉さんの脚本の魅力は?
福原
 僕、舞台上で人間が見たいと思ってるんで、漂白されてない人間が出てくるというのが第一の魅力ですね。当たり前のことのようですけど、あんまりよその舞台では見せてもらえないんで、千葉さんの舞台は好きですね。ちょっと前に成志さんが、「一緒にやるのに観たことがなかったから観に来たわ」って僕の舞台を観に来てくれて、そのときの感想が「猫ホテだねー(猫のホテルの芝居に似ている)」って。
千葉
 えーっ! そんなこと言ったんですかー?
福原
 ええ。「ああ、千葉さんの影響受けてんだねー」って言われて、「そうなんですよ」って。
 僕、つまんないことがあるのがイヤなんですよ。だから、「この芝居、どうなんだろう」っていう芝居を見ても、それは僕に楽しむ能力がないんだと、一生懸命、どういう角度で見ると楽しいのか考えるんです。でも、千葉さんの芝居は最初から楽しかったんで、あまり考えずにずっと見てて、なにが魅力とか分析したことがないんです。
 今回、台本を読んでて思ったのは、僕は千葉さんのリズムで育ったんだなと。戯曲って読むのが大変じゃないですか。人のホンを読んでて、セリフを追ってると脳内で言葉数が合わなかったりするんですよ。それで「ああ」とか「うん」とか、そういう言葉を足して自分のリズムに合わしていくんですけど、千葉さんの台本ではそういう作業がいっさい必要ないんですよ。だから……話をまとめると、僕の大好きな人間が、僕の好きなリズムで出てきて、しゃべっているということなんですかね。
  
  
——役者の方々でこの人はマークしておきたいと思っている人はいますか?
福原
 思ってても言えない(一同笑)。みなさんを僕はずっと客の立場で見てきていて、今回、ご一緒できるとは思っていなかった、金井(良信)さんのような方とやれるのが、楽しみですね。山西(惇)さんとも久しぶりで楽しみだし。
千葉
 小川(菜摘)さんが、またちょっと違った風を入れてくださってますよね。
福原
 ここに並んでない役者さん、何人かに「俺も50歳なんだけど」って言われましたよ(一同笑)。
千葉
 福原さんに言われてもねぇ。
福原
 そう。「すいません。僕に言わないでください」って。
  
——福原さんは、久ヶ沢徹さんの生誕50周年祭りも演出されるんですよね。
福原
 そうなんですよ。でも、年上の方とやるのは、すごく楽しいです。若い人とやるのも楽しいんですけど、「ああ、俺も通ってきた」っていうこともけっこうあるんです。年上の方は、僕が知らない世界を進んでいるので、「そんな世界があるんだ」と驚くことがあって楽しいんです。こんなこと言うと失礼かもしれないけど、打ち合わせとかしていても、みんな子どもみたいに楽しそうですよね。先を歩いている先輩が魅力的というのは、本当に心強いというか、ここを目ざせばいいんだ、がんばろーって気持ちにもなりますし、夢があります。才能あふれる若者が出てきてもびびるだけですけど(一同笑)、才能あふれる先輩が闘ってる姿は夢があります。
千葉
 それは確かにありますよね。私も木野花さんを見て、そう思ってますね。本当に夢が広がります。
  
——最後に、この芝居を楽しみにしているみなさんにメッセージを。
千葉
 昨今では、ちょっとやっていないタイプの舞台に、確実になると思います。49歳から50歳の境目にいる10人と、福原さんとで熱くつくりあげていくこの舞台を、ぜひともご覧いただきたいと思います。
  
福原
 そうですね。熱い芝居をやりたいと思ってます。それなりの年齢の役者さんたちなので、そういう人たちが全力で芝居しているだけで、芝居のストーリー以外に、こぼれ出るものが絶対ついてくると思うので、それを見ていただければと思います。たぶん、いろんなモノを、ボロボロこぼしたり、もれたり、吹き出したりしながらの芝居になると思うので、楽しんでいただけると思います。

 演劇界内外からの注目を集めている話題の作品『いつか見た男達〜ジェネシス〜』。 
 今回、千葉雅子さんと福原充則さんのおふたりからお話を伺って、本作品の目指す地平の片鱗が伝わったでしょうか。
 これは間違いなく2012年演劇界の「事件」のひとつ。お見逃しなく。