――現代にあわせて脚本を改訂したリメイク版ということですが、そのリメイクのポイントは?
G2
 22年経っていますから、どうしても中島氏のオリジナル台本には、時代とともに色褪せている部分はあると思うのです。なぜならば、中島氏に脚本を依頼したとき「今という時間でしか上演できない、今の話を書いて欲しい」とお願いしたのです。上がった台本はまさに注文通りでした。しかしそれは反面、今で無くなった時には古くなってしまう戯曲でもありました。だから、パルコの再演の時にも台本の一部を中島氏の同意のもと、若い作家に手を加えてもらっています。(若い作家といってもあれから12年。彼はもう若くはありません)

 今回も、AGAPE storeのラスト3作をお願いした作家・桝野くんに改訂をお願いしています。
 そのポイントは、まずもって「今の時代に合わせる」ということですね。
 時代を経ても古くならない名作というのも存在しますが、『こどもの一生』は時代を経るごとに化粧を変えていく必要のある名作、ということが言えるのではないかと思います。
 まあ、これが100年経つとまた違うのでしょうけれど。

 余談ですが、作者のらもさんは8年前の7月26日、酔っ払って階段から落ちてお亡くなりになりました。らもさんらしい最後でした。享年52歳。
 らもさんは僕よりずっと歳上の先輩だと感じていたのですが、いつのまにか、私は53歳。なんとらもさんより長生きしているではありませんか?
 そんな感慨も、この企画をやらねば、と思った要素のうちのひとつなんでしょうね。
――今回の公演でとくにやりたいこと(とくに演出面で)はなんですか?
G2
 何よりもまず、俳優と一緒に劇空間を遊びたい、ということです。
 なにしろ吉田鋼太郎を始めとして、山内圭哉、戸次重幸、という気心の知れた信頼できる俳優もおり、一昨年の『W〜ダブル』で、素晴らしいコメディエンヌの片鱗をみせた中越ともまたゴシゴシぶつかっていきたいし、憧れの谷原章介、鈴木砂羽さんの胸を借りつつ、ミュージカルじゃないのに歌姫・笹本玲奈ちゃんが出てくれるのも何だか嬉しい。周囲の大お薦めで、実はよくは知らない玉置怜央くんもきっと新鮮な刺激を与えてくれるに違いありません。
 この俳優陣たちと、とことん状況と演劇と、キャラクターと物語、そして笑いと恐怖について、遊ぶ……すみません仕事なのに、ハッキリ断言します。遊びたい。
 うまく遊ぶことで、それこそ「こども」というタイトルにちなんだ劇空間、そして新鮮な風を古い作品に吹き込み、みずみずしさをもって再生することが可能になるような予感がしています。
 正直、それを考えると、嬉しい反面、不安や恐れを感じる部分も自分の中に発見することができます。そこが新鮮ですね。最近、どんな新作でも妙な自信があって、不安や恐れをあまり感じなくなってきていたところです。僕自身、この不安や恐れと、いかに戯れることができるか? それが課題なんでしょうね。
――観に来られるみなさんに、メッセージを
G2
 すでに、古くさいとか、不安とか、しかも遊ぶとか、不穏当な発言ばかりで、観に来られる皆様には、お詫びのしようもありません。
 今から謝っておきます。すみません。遊びます。でも不安です。
 そんな演出家が作る作品ですが、きっと腰抜かすほど面白くなるに違いありません。ぜひご来場ください。