G2プロデュース公演#5「天才脚本家」の稽古場から、 演出のG2が日記をお届け致します。
豪華なキャストが顔を揃える稽古場。その稽古の中でG2は何を見ているのか? お楽しみください。

■10・23 火
稽古スタート! 仕事で東京にいる腹筋を除く11人が勢揃いだ。稽古場には、初日から舞台監督と演出部スタッフも揃っているし、制作も2人も稽古場に顔を出してくれている。とてもにぎやかである。台本もようやく最初の4分の1ほどができあがってきた。今回は後藤にしては遅筆である。彼にしては難産だ。だが、あがってきた分を読むとかなり安心。ん。このスタートなら面白くなる予感でいっぱいだ。 そう言うワケで、稽古は早々と切り上げて全員で飲みに行く。(どういうワケだ?) ヤバイ。今回は大阪は天神橋商店街の付近に稽古場を構えたのだが、このあたり安くてうまそうな飲み屋がいっぱいだ。毎日、泥酔しそう。ま、稽古初日くらいいいさ。と、全員でご機嫌で飲んでいる中、ふと見ると家に帰って台本を書くはずの作家・後藤ひろひともちゃっかり飲んでいるではないか! おいおい、これで今夜はもう書けないぞ。ま、いいか。今日は特別さっ!


■10・24 水
稽古の早々にキャラクターが見えてきたのが川下大洋さん。彼には今回、おとぼけキャラを演じて貰うことになった。自らをDocと名乗り、一流大学卒でインテリの大洋さんだが、実は普段の彼はどこか抜けたところのあるキャラクター。今回はその「地」のキャラクターを全面的に押しだしてもらうことになった。演技力のある大洋さんが、自分自身のキャラクターに挑戦。……結果は? 稽古場では大爆笑を巻き起こしている。ほんのちょっとした些細な台詞が爆発的に面白いのだ。後藤の台詞と大洋さんのキャラクターが絶妙にからみあって、うん、これはいけるってカンジ。


■10・25 木
稽古場のオアシス。それはコング桑田だ。彼の普段のキャラクターは、敢えて誤解を恐れないで発表してしまうと、「ホモ」っぽいのである。でも、それはいいカンジの「ホモ」さ加減なのだ。女性がもつような優しさと気配りが彼にはある。誰かが悩んでいると、「オーケー、オーケー、全然大丈夫。うん、いけるいけるよ。」と慰めてくれる。他の役者に演出をつけていても「そうそう、そうだよね」とか「わお! 素敵」とかプラス方向の合いの手を入れてくれる。そればかりか休憩になると、各テーブルの灰皿の掃除と交換までしてくれたりする。(ただ、スタッフは「そこまでしていただかなくともコングさん……」と恐縮気味なのだが)そんな稽古場のオアシス・コングに明日、大ピンチが訪れることになる。


■10・26 金
今日、コング桑田にあることをお願いすることになった。なんとそれは配役変更である。次々と稽古場に台本は届けられてくるのだが、そのため役者としての後藤は稽古場に現れない。そこで後藤の台詞をコングに代役で読んでもらったのが運の尽き。めちゃくちゃ面白いのだ。後藤が自分のために書いた役なので、いつもの後藤キャラクター台詞が満載なのだが、それをコングがやると不思議な次元に俺たちを誘うというのか、はち切れんばかりの巨体がはりきれんばかりのテンションでいっぱいになるというか。とにかく稽古場の全員が笑い死にするかと思うくらい爆笑のるつぼと化したのである。ここまでやられちゃー、仕方がない。後藤とコングの役どころを交代することにした。それをコングに告げると、コングは「え? 代役だからっていう安心感でいい加減にやっていたのに……」だって。彼はいい加減にやったくらいが最高に面白いのだと、また勉強した。


■10・27 土
今日は、稽古はお休みです。ウィークリーマンションに滞在中のメンバーが三上の部屋に集まってカレーパーティーを催したらしい。私と言えば、MOTHER「クラウドバスター」のビデオの編集で徹夜である。ううっ。休みが欲しい。


■10・28 日
今、稽古場の流行と言えばミシェルである。ミシェル、それは神野美紀に後藤がつけたニックネームだ。「人間風車」の頃はミシェルと読んでいたのは名付け親の後藤だけだったが、今回コングやら三上やらが「ミシェル」「ミシェル」を連発するものだからすっかり定着することになった。さてそのミシェルこと神野美紀。ゴージャスな美人ルックスとはほど遠いボケボケキャラクターなのだ。そして酒豪。稽古の最初の立ち稽古のとき、台詞を言っている途中でちょっとつまったかな……と思った次の瞬間「あー、飲んでいるような場合ではありませんでした。すみませんでした!」と突然の懺悔をして周囲を驚かしてみたり、稽古の休憩中に荷物をまとめて「こんな稽古、やってられません」といなくなったり、(もちろんジョークである)稽古場へのギャグ提供にいとまがない。そして本人は至って美人。うーん。不思議な人である。そして美人と言えば、そうあのラブハンターの動きが気になる。そしてそれは明日の話題だ。


■10・29 月
さて、「天才脚本家」というタイトルなだけに、このお芝居には二人の天才脚本家が登場し、物語の前半ではその二人が対決するという筋立てである。その二人の天才脚本家に扮するのが艦長・三上市朗とラブハンター・関秀人。お芝居のかなり最初のあたりでこの二人が対面するシーンがある。ちょっと古いが「ダイハード」の1作目で、 ブルース・ウィリスがテロリストの首謀者とばったり出会うシーンがあったが、あれに通じる息詰まる駆け引きの場面だ。そんな二人がプライベートでも火花を散らしている。平たい話、ミシェルの取り合いである。最初にリードをとったのは三上。パンフレットの写真撮影で熱々のカップルに扮してのラブラブ写真を撮ってしまったもの だから、黙ってられないのがラブハンター関秀人である。今、稽古場であの手この手でミシェルを攻略すべくラブハンター光線を出し続けているらしい。そのせいか、関秀人の演技が日に日にハードボイルドな男のフェロモンいっぱいの艶っぽいものになってきている。うん、うん、これはこれで大オッケーだ。ますます火花を散らせ艦長VSラブハンター。


■10・30 火
今日は、美術の池田さんがセットの模型をもって登場。まだ台本が半分ほどしかできあがっていないため、後半は想像しながらの美術打合せである。私が「もう少しこうならないかしら」と注文をつけると池田さんはその場で模型を切ったり貼ったりして注文を形にしていってくれる。調子にのってどんどん注文をつけていたら、池田さんが最初にもってきた模型とは似ても似つかないくらい変形してしまった。「すみません」と謝ると池田さんは「いやなに、そのための模型ですから……」と寂しく笑っていた。ああ、ごめんなさい池田さん。結局、美術プランは振り出しに戻ることになり、今週末にもう一度模型をもってきてくれることになったのである。うーん。後藤よ、早く残りを書き上げておくれ。と二人で夜空に祈りながら再会を誓った私と池田さんであった。


■10・31 水
台本の進みが遅れているため、今日は6時で稽古アップ。何か芝居でも見に行こう。 たまたま近鉄小劇場で佐野史朗さんの舞台があるではないか。ということで観劇。いやー、素晴らしかった。舞台俳優・佐野史朗も恐るべきである。なにしろ20歳の役なのだ。そんなことあり得ない。というのを吹き飛ばす名演だった。山崎哲さんの演出も、ややアングラ系の古さは感じたものの、凄いパワーだった。とても2人芝居とは思えない迫力。これは、負けてはいられん。明日からの稽古、さらにガンバロっと。


■11・1 木
えらいもんで、今日から11月である。だからというワケでもないのだが、稽古終わりに牧野エミと会った。関、コング、野田、高倉などと焼き鳥屋で飲んでいるところに呼んだのだ。牧野は相変わらずの牧野ぶりだった。いやいや、いろんな意味で。関やんがここでもラブハンターぶりを発揮し牧野を口説いていた。今年から人妻になったことなんか全く彼には関係ないらしい。焼鳥屋を出たのは2時を過ぎていたが、牧野は「今夜はG2は返さへんで」っちゅうことで、2軒目は天五屋。うなぎの店である。そして3軒目。MOTHERの解散がらみのことなどを語った。でも、二人ともぐでんぐでんになった。


■11・2 金
さて、久保田浩である。クボッティーと言えば、伝統お家芸「羽曳野の伊藤」を思い浮かべる人がほとんどだろう。さて、その「羽曳野の伊藤」。後藤ひろひとが遊気舎を脱退して以来、見ることができなかったのだが、今回の「天才脚本家」で久々に目の当たりにすることができる。ただ今回は「羽曳野の伊藤」ではなく、「電通の伊藤」 だが。果たして、久々に見る「伊藤」キャラは稽古場を大爆笑の渦に巻き込んだ。彼の演技に関しては演出範囲外である。なんせ伝統お家芸なのだから。ところでお家芸といえば、腹筋善之介のパワーマイムも今回の芝居では復活する。しかも、まだその部分の台本は上がってきていないが、久保田浩と腹筋善之介の直接対決のシーンが予定されている。楽しみ楽しみ。


■11・3 土
今日は、稽古はお休み。けれど私は、新・チケットシステムのプログラミングで一日が終わる。これができたら、チケットの配送がほとんど自動になる。だから、がむばらねば。し、しかし……。うーん。休みが欲しい。休み〜。


■11・4 日
何回目かのセット打合せ。しかしながら、「コレッ!」という案も出ず、膠着状態。 というのも、今日くらいには完成するだろうと言われていた台本が遅れているためである。ラスト30分の台本がなく、演出家と美術プランナーとで、想像しながらセットを考えるのだから、これは難しい。今日も、もうダメか……と思われたその瞬間、プランナーの池田さんが「うん」と唸ったかと思うと、なにやらスケッチを描き出した。お。おっ! いいじゃない。それ。いままでとは全く発想の違うセットだ。しかも、これならラストシーンがどうなっても対応できそうだ。「それでいきましょう」と池田さんのラフ・スケッチにゴーを出す私。やった。とりあえず、台本が完成していないのに、美術プランの方向性は定まった。


■11・5 月
今日は稽古を休みにした。美術セットのプランが上がったので、今まで稽古をつけてきた動きとは全く違う動きを考えなくてはならないからだ。でも、私と後藤は雑誌社の取材で稽古場へ。取材の折の後藤の毒舌は健在だ。夜は近鉄劇場に芝居を観に行く。 終演後、楽屋の斉藤由貴さんを訪ねる。今はこの舞台と海外ロケ紀行ものをいくつか掛け持ちしていてとても忙しいとのこと。「お忙しいでしょうが、また私の演出の舞台にも出てくださいね」とお願いして楽屋を出る。


■11・6 火
脚本の進みが遅くなってきている。物語も丁度、主人公たちが敵側にボロボロにされて、一体どうすれば脱却できるのかわからない状態にさしかかったところで、稽古場は重い雰囲気である。というか、重い雰囲気の芝居の稽古が続く。 だが、稽古後は相変わらず大盛り上がりの酒宴大会である。しかも毎日同じ店。私は毎日行っているわけではないが、どうやら、コング・野田・関・久保田あたりは毎日のようである。このベースメンバーに何人か日替わりゲストが加わる。今日は、私のほか音響のヌーボーさんと舞台監督のツトムさんがゲストだ。今夜はミシェルにまつわるクイズで盛り上がっていた。めげるということを知らないメンバーたちで、とっても助かる。


■11・7 水
今日から、新セットの構想に基づく演出をつけだした。この構想では、「マスコミへ様々な情報が流れていく」という状況を、役者全員で表現する。というような抽象的な動きが必要になってくる。今日は全員に新聞紙を持って貰い、「新聞を媒体に偽の情報が流れていく」という表現に取り組む。相当時間がかかったが、手応えのあるシーンができあがる。だが、今から全編に渡り、こういう演出をつけていかねばならない。 稽古場で私は悩みに悩むことになる。稽古終了後、野田くんに「こういう稽古は面白いですねー。G2さんが悩んでいる姿も新鮮でいいですよ」と言われ勇気が出る。


■11・8 木
きょうは稽古は定休日。だが私は、東京に舞い戻り様々な打合せをこなす。来春に予定されているパルコ公演のチラシの打合せで、な、なんと大江戸線の終着駅・光が丘まで出向く。終了後は、我がジーツープロデュース事務所へ。7時頃、升毅が宮吉とますもとを従えて事務所にやって来る。3人で「男たちの挽歌」シリーズのビデオを見ていたと思ったら、近くの居酒屋に消えていった。私はそれに参加もできず、プロデューサー業務に明け暮れる一日であったりした。うーん。ほんと、休みが欲しい。


■11・9 金
とんでもないシーンが誕生した。前代未聞、演劇界初、怒濤のようにくだらないスーパー爆笑シーンである。なんだか、意味不明の形容になってしまったが、とにかくとんでもないシーンである。 それは、久保田浩と腹筋善之介のバトルシーンだ。 久保田と腹筋が出せる技をすべて繰り出しての格闘の連続である。久保田が姿を消すかと思ったら、腹筋は超スピードで追いかける。久保田のピーボン攻撃に、腹筋のパワーマイムが炸裂する。そして、気の遠くなるほどくだらない戦いの終止符を打つのは、謎の「サスカッチ攻撃」。とにかく、芝居の本編とは全く関係ないのだが、かなり必見のシーンとなってしまった。


■11・10 土
美術セット完成! 模型が稽古場に運ばれてくる。一言で言えばクールなセットだ。 役者全員の動きと、照明とでいくらでも表情がかわるセットである。ここまで来るのに相当、紆余曲折があっただけにプランナーの池田さんの顔も晴れやかである。あれ? 制作の大西の顔だけは曇りがちである。どうしたのか聞くと、「床一面に敷くリノリウムが、ドイツから取り寄せた特注品」だそうで、相当お金がかかっているとのこと。金庫番の大西としては頭が痛いらしい。世の中どこにお金がかかるかわかったもんじゃないのである。くわばらくわばら。


■11・11 日
可哀想なのはリリパット・アーミー関係者の3人。山内・コング・野田である。なぜなら今回衣装を担当するMeiMeiというチームのリーダーは実はリリパット・アーミー座長・わかぎえふその人だからである。今回のわかぎの衣装プランは「革」。ハードボイルドなイメージを全員が「革」を着ることで演出しようというワケである。予算が限られているから全員が「革」を着るために、役者がイメージどおりの革ジャケットなどを所有している場合は「自前でお願い」というケースも出てくる。前述の3人 はわかぎえふに誰が何をもっているか知られているため、上から下までほとんど自前の衣装となってしまった。でも、皆さん。コングの衣装はとても自前とは思えない凄いジャケットですよ。お楽しみに。


■11・12 月
今日、稽古場に謎の生物・イヌガマが届いた。え?イヌガマって何かって? 三上演じる主人公の春木というTVディレクターが生み出した謎の生物なのだが、これが物語の中で単なるギャグに終わらない役割を果たす、まあ言えば13番目の出演者なのだ。イヌガマ製作は、「クラウドバスター」の槍や剣を作ってくれた水野くん。特殊小道具の名手だ。デザインは演出部の橋本女史。一目見ただけで「こどもがギャンギャン泣く」ほどの不気味な姿をしている。というのが台本での指定なのだが、橋本さんのスケッチブックは様々なおぞましい姿のイヌガマだらけになり、とても不気味なスケッチブックになってしまった。そ、それにしてもこの人の頭の中は一体どうなっているのか?と思ってしまうほど、どれも気持ち悪い生物になっていた。ひょっとしたら日本のギーガーになれるかもしれない。橋本さんは。