また行っちゃった! 都合3度目の連載となるロンドン日記。
出国前は「3度目ともなれば慣れたもんよ」とうそぶいていましたがはてさて?
毎度のように観たいお芝居をいっぱい計画してロンドンへ向かったG2。
行ってみれば今回も新発見の連続だった旅日記をぜひお楽しみください。
▼#1
「3度目」の旅のはじまり


▼#2
ZはゾロのZ


▼#3
コンプリシテ


▼#4
『テーブル・マナー』視察


▼#5
モンティ・パイソン


▼#6
ロンドンの日々より


 いやーロンドンですよ。もう馴れたもんですよ。すいすいーっと地下鉄を利用して、懐かしきピカデリーサーカスの日本企業の文字を横目に、私が向かうはJCBのロンドン支店。
実は、前回書いたようにサイモン・マクバーニーのチケットはバービカン劇場のHPで直接手に入れたのだったが、それ以外のチケットは、すべて取りまとめてJCBさんにお世話になった。(その方法などについては後で説明します)それらのチケットは本来は観劇する劇場のボックス・オフィス(券売の窓口)で受け取ることができるのだが、唯一『テーブル・マナー』のチケットだけは例外だった。
『テーブル・マナー』は、最初「ウチの取引きのあるエージェントが扱っていませんので……」という説明を受けたのですが、「この公演を観るためにロンドンに行くんです」と泣きついてみたら、「なんとかしてみましょう」と、普段は取引のないチケット・エージェントにかけあってゲットして頂いた。「ただし、手数料はお高く、チケットはJCBまで取りに来て頂かねばなりませんがよろしいですか?」いいです、そんなの全然いいです。見られるなら。
 だって『テーブル・マナー』も前回のコンプリシテ公演同様、ネットで扱っておらず自分ではどうしようもなく、JCBに頼るほかなかったのだ。今までのロンドン旅行の経験上、どんなに人気公演でもミュージカルであればロンドンに行ってからその劇場のボックスオフィスに行けば大抵は手に入るというのはわかっていた。(前回のその様子にリンク)が、なにしろこれも期間限定公演であり、やや小さめの劇場なので直接行ってみたけれどソールドアウトだった、では悲しすぎる。(実際、『テーブル・マナー』は超満員だった!)
さて、JCBで『テーブル・マナー』のチケットを無事受け取る。「お客様、本日は私どもで手配致しました別の公演が30分後に開演ですが?」「はい、ギャリック・シアターですよね? ここから歩いて行けますよね」「大丈夫です。私も、あのミュージカルは大好きです」
と、JCBのスタッフも薦めるミュージカルとは『ゾロ』 今年から幕を開けた新作である。



 結果から言えばこの作品は「当たり」だった。
 まあとにかく「カッコイイ」のだ。エンターティンメントとしてほんとに真摯に丁寧に作ってある。日本の平均的な公演にくらべて確かにお金はかかってはいるが、かといって「お金かかってますねえ」みたいな誉め言葉はホントに似合わない。むしろミュージカルをやるにはあまりにも狭い劇場なのだが、そこを、もの凄く工夫してアイディア勝負で奮闘している姿が微笑ましい。

 劇場の舞台の大きさは紀伊國屋ホールとほぼ同じとみた。オケピもない。しかも時折下を走る地下鉄の騒音も聞こえてくる。消防法の関係からか側壁の非常灯が消えないので、暗転中に役者がハケたりするのが見える。(それがその前の場面で死んだ設定だったりすると、ちょっと悲しくはなるが)転換も役者ががんがんやってるし(これは僕も好み)大きな装置チェンジは中割を締めてその間に転換という月並みな方法ではあるが、そういう逆境はもろともしない。すべてになにかしらオリジナルな味付けが施されていて飽きさせない。ジプシーの移動のワゴンがそのまま装置になったり、プロセニアムの梯子がかなり有効に使われていたり、微妙にステージがリフトで十数センチだけあがっていたり(でもその地味な変化がかなり効果的!)「怪傑ゾロ」がロープにぶら下がってターザンよろしく登場するたびに「カッコイイ!」と鳥肌がたつ。見せ方とタイミングがうまいのである。(あと、狭い劇場なのによく袖で激突しないなあ、と感心したり)
 何と言ってもジプシー・キングスの音楽がいい。使い方にもカタログミュージカル的な安易さがなく、まるでほとんど全曲、このお芝居のために書かれたような印象。オケピは無いがギタリストがステージの上のほうに登って生演奏したりしてるところを見せてくれたりするので臨場感もある。ほとんどの曲がフラメンコ・ギターと役者の足踏みによるパーカッション(タップダンスとは少し赴きが違う、フラメンコダンスのアレね)で驚くべき躍動感を演出していた。
 びっくりしたのはオープニング。ステージいっぱいの大きさのZの文字が(宣伝ロゴと同じ雰囲気で)燃え上がる。


  いや、それ自体はまあロンドンのスタッフならやってくれるでしょうって感じなのだが、まだその文字の炎が消えきってないのにバトンが飛んでいったこと。隣のバトンの装置に飛び火して火災になったりはしないのか? これ以外にも松明や篝火など、しょっちゅう本火は使われており、それがとても効果的だった。(日本では消防署が許さない?)
 ゾロはジプシーの一員で、イリュージョンをやって見せているのが商売という設定。敵と戦うにも時々イリュージョンを使う。二人の敵に両腕を押さえ込まれ両膝を掴まれていたゾロが、(後ろ向きでマント姿ではあったが)一瞬のうちにかき消えた場面は全く仕掛けが分からなかった。おもわず「おーっ!」と観客席からも驚嘆の声が洩れていた。
 とにかくストーリーがうまくできています。アクションシーンも素敵なんだけどそれに頼らず、人間をきちんと描いている。なぜゾロという覆面をしなくてはならかったのかっていう理由にもちゃんとドラマがあるのだ。そのあたりは他の覆面スターとは一線を画している。敵に対して素性を隠しているがために恋の関係ももつれたりして、まあ、そういうストーリー展開とサイドプロットの仕掛けがうまいのである。
 役者もよかった。やっぱみんな歌うまいし、特にジプシー役の女性のいかにもジプシーなこぶしが良い。ジブシー風の節回しっていいんですよねえ。アンサンブルにも何人かそっち系の人がいるみたいで、アンサンブルのコーラスも聴き応え満点。
ヒロインも体当たり演技で、入浴シーンなどはマジ全裸だった。
 バックヌードを一瞬ですが堪能させて頂きました。ダンスもショーってカンジではなく、想いが募り気持が高ぶった結果、身体は自然に動いてしまうのだという理屈が通っていて「いきなりダンスかよ」「いきなり歌うのかよ」っていう空気の温度差がない。ロンドンに来て本当によかったと思える観劇であった。こういうの見ると明日への活力が湧いてくるのよねー。
 ちなみにJCBが手配してくれた席は、かなり理想的な位置だった。しかも本来60ポンドの席が割引で38ポンド。すべての人にお勧めできる方法でないのが心苦しいのですが、JCBさんにお芝居の手配をしてもらうのはお勧めですよ。

・JCBロンドンのサイト
http://www.jcb-global.com/plaza/london.html
もちろんJCBでの支払いになりますが、チケットを押さえるという意味での手数料は無料、本文にもあるように公演によっては割引でぐっとお安くなります

 観劇後、衝動的に近くのイタリアン・レストランに入る。これもかなり正解。過去のロンドン旅行と比べても「美味しい!」と思えた。スパゲティ・ボロネーズとトマトサラダと白ワイン合わせて16ポンドなり。この内容で日本円で3千円は高すぎるけどね。でもロンドンだと相場かそれ以下だから、まあ良い店だったと思う。
 さて、店を出て私が向かうは、地下鉄バービカン駅。そう、いよいよサイモン・マクバーニー率いるコンプリシテの公演『A Disappearing Number(消失する数字)』を観ることになるのだ。その詳細については次号を乞うご期待!



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ピカデリーサーカス
ロンドンのウェストミンスター区ウエスト・エンドにある広場の名称。
この場合の「サーカス」とは「通りの合流点における円形の空き地」の意味。だそうです。

サイモン・マクバーニー
演出家、俳優、「コンプリシテ」芸術監督。1957年イギリス出身。
演出家として非常に評価が高いサイモンさん。最近の俳優活動としては映画『ライラの冒険黄金の羅針盤』でその姿を見ることが出来るようです。

『テーブル・マナー』
イギリスの劇作家アラン・エイクボーンの出世作。
AGAPEstore初の翻訳ものタイトルとして、現在鋭意制作中!
↑こちらがAGAPE版

コンプリシテ
サイモン・マクバーニーが1983年に仲間と結成したカンパニー。
結成した当初は「テアトル・ド・コンプリシテ」という名称でした。

ギャリック・シアター

(Garrick Theatre)
1989年に誕生。
劇場名は、十八世紀の名優ディヴィット・ギャリックから。









































プロセニアム
プロセニアム・アーチ
客席から舞台を見たときに額縁のように見せている装置。多くの場合、当たり前のように存在し、特に意識されることはありませんが、非常に重要な装置のひとつ。

ジプシー・キングス
フランスの音楽バンド。フラメンコを基調としロックの要素を加えた楽曲が大ヒット。ワールドミュージックというジャンルを確立させたグループのひとつと言われている。空耳の宝庫。

カタログミュージカル
その作品のために曲を書き下ろすのでは無く、既存のヒット曲を配して進行するミュージカル作品のこと。アバの楽曲群で構成された『マンマ・ミーア!』の大ヒット以来、一組のミュージシャンの楽曲のみで構成されたミュージカルが数多く作られ、特にそういった作品を指し示す場合も。
ジュークボックスミュージカルとも言う。















バトンが飛ぶ
舞台の上空にあたる部分には、「バトン」と呼ばれる鉄パイプが多数吊り下げられ、そこに照明やスピーカー、装置などが所せましと取り付けられています。
バトンは操作することによってその高さを自在に変えることができますが、特に舞台上空、客席からはプロセニアムに隠されて見えなくなる部分へ引っぱり上げることを「バトンを飛ばす」と言います。
『ゼロ』の場合は燃えたままの装置を「飛ばした」わけで。舞台上空に消火班が待機していたのでしょうか?

本火
本物の火。リアルファイアー。




























ボロネーズ
ひと言でいうとミートソースですよね




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