さあ、今回でロンドン・リポートも最終回。まだまだ書くべきことはいろいろあるのだが、あまり長くなるのもなんだし、それに白状するとだんだんロンドンでの記憶が曖昧になってきてる。そんなワケで最終となる今回は、オーソドックスともいえる、日本でもバンバンやっているミュージカル2本。


地下鉄のポスター。
なぜかジャン・バルジャンではなく、この人。

「レ・ミゼ」の有名なマークが目につくパレス劇場

 まずは、『レ・ミゼラブル』。
 これを最終回に持ってきたのには理由があって、まずロンドンで観て、この原稿を書くまでに日本でも観て比較記事を書こうという計画だったのだが、残念ながら日本版はまだ観ることができていない(ごめんなさいっ)。
 さて、今回、予算の都合上、客席は3階である。これはある意味ラッキーだった。 『レ・ミゼラブル』は廻り舞台が基本で、そこに後方から装置がセッティングされ、舞台が廻ることでその装置が前面にやってくる。というのが基本の舞台演出。で、後方では次のセットが準備されていたり、またそのセットのまま廻ることで、例えば門の外と内、バリケードの外と内、みたいな転換も行う。
 3階席だとかなり上から見下ろすことになるので、この舞台転換の模様がはっきり見えた。すごいのが、廻り舞台とその周辺にレールが轢いてあって、舞台転換の時に、そのレールとレールが寸分違わず一致したところで廻り舞台が止まること。レールが一致していないと、新しい装置が後方から入ってくることができないのだ。「これは相当難しいテクですよ」と日本版『ピーターパン』の舞台監督も言っていた。
 だが、残念なことに、あまり俯瞰で観たために物語も俯瞰で観ることになってしまい、感動は感じられなかった。パリの街の巨大なセットが、90度縦方向に廻ることで、巨大な瓦礫のバリケードになるのには感動したけれど。
 第一、ジャン・バルジャンの活躍があまりにも超人的すぎる。でも、これは上から観たせいかもしれないので、日本版はぜひ、良い席で観てみたい。


パレス劇場前にて


 最後の一本はこちらも超ミーハー『オペラ座の怪人』。
 これに限らず、今回、どの作品も日本で見たことはないので、断定は早計かもしれないが、『オペラ座の怪人』はやはりロンドンの古い劇場で観るべき。だって、ハー・マジェスティー劇場には、本当に怪人が住んでいそうなんだもの。

これが「ハー・マジェスティー劇場」ハーは女王のこと。

 こちらは1階席での観劇。しかもかなり舞台に近い席。というかこの劇場、あまり客席が広くなく、舞台と客席とが一体感を感じやすくなっている。それだけに、まあ、シャンデリアは落ちてくるわ、やれ、怪人は劇場の天井に消えていくわ、っていうのがいちいち迫力満点。
 舞台装置は、これはもう趣味もあるけれど、最高峰。センスと効果が他の追随を許さない。有名な蝋燭の海の中を怪人が舟をこぐシーンはもちろん、劇場の屋上へ出たときの奥行きはまるで映画みたいだし、階段いっぱいにレイアウトされた役者と人形のダンスは、もう両目が一年分の滋養をもらったな、っていうくらい美しい。
 んで、曲も切ないのね。怪人の愛の切なさが張り裂けそうなくらい歌い上げられていく。これ、前の方で観ると「しつこいなあ」という気持ちも吹っ飛ぶくらいの感動モノ。やっぱ、芝居は良い席で観るべき。
 さて、今回の2本。共通して感じたのは、カーテンコールがスピーディーだったこと。段取りの量 は日本のカーテンコールと同じなのだけれど、ひとつひとつのテンポが速くて気持ちいい。あの全員が手をつないでのお辞儀もとてもスピーディーでオシャレ。本場のあれは、手の位置が腰あたり、つまり淑女のお辞儀の位置。日本だと、ほら、プロレスラーがタッグマッチで勝ったといわんばかりに上に挙げるけれど、やっぱロンドン風のほうが気持ちいい。今度真似しよう。


マジェスティー劇場はロビーもこじまりと上品。

 さて、無責任に書きまくってきたロンドン旅行記。これで終わりです。
 最後まで読んでいただいた読者の皆さん、ありがとうございました。そして突然のロンドン旅行を容認していただいたお仕事仲間の皆様、旅行中も事務所に詰めて仕事をしてくれていたスタッフにもこの場を借りて感謝の意を表します。ほんと、ありがとう。
 これに、懲りず、またロンドン行きます。今度は、ストレートプレイも観たい。そのためには英語力ですな……。誰かどこかいい英会話教室知りません?

2003年 初秋 G2



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