・桝野幸宏(ますの ゆきひろ)… 1968年生まれ。石川県小松市出身。 大学在学中は映画製作サークルに入っていたが、友人に連れられ、 ラジカル・ガジベリビンバ・システムとWAHAHA本舗を観て舞台に目覚める。その後、放送作家となり、関西でバラエティから スポーツ番組まで、いろいろと活動中。 過去の主な演劇作品  劇団王貞治「いきいき人生」「ものすごいチョップ」など。 MOTHER「行方不明同好会」、MOTHERLESS CHILDREN「リバウンド」、GISELLE「お察しします。」以下、オムニバスに参加、カメレオン会議「たしあたま」、jelly fish「−オクラゲ オムニバス コント−」
--AGAPE storeというユニットは、どんな印象ですか?
 僕がそんな世代だからかもしれませんが、近鉄アート館とかがあった時代のニオイも残しつつ、最新の演劇界でも王道であろうとする感じで、「芝居初体験」という友達を連れていっても絶対大丈夫な感じ。初めて観た演劇が受け入れられないと、次に劇場に足を運ぶことが億劫になるので、これは大事なことだと思っています。

--「からっぽの湖」という、この物語の発想の原点は?
 もう、1年前なんでよく覚えてないんですけど……いつものやり方で言うと、伊丹十三監督の映画『お葬式』とか『スーパーの女』とか、のように「あまり誰も手をつけてない設定、ジャンル」を考えるんです。地方出身者なので、どうしても地方が舞台になりますね。好きな登場人物はちょっとダメな人……そんなのをずーっと考えてて、今回の物語につながったと思われます。たぶん電車の中か風呂の中で浮かんだか、と。何かの事件をモチーフにとか、そんなことは一切ありません。

--書く上で特に意識した点は?

 締め切りを守る、できるだけ……遅れましたけど。
 よくやるんですけど、書いてる初期の頃はイメージにあったテーマソングを決めて、その曲を聴きながら芝居の世界にだんだんと沈んでいって続きを書き出す、という儀式をやってました。今回はデヴェンドラ・バンハートの『クリップル・クロウ』というアルバムです。で、佐藤さんのサントラをちらっとだけ聴いたところ、これまたぴったりでいい感じでした。
 松尾さんは『TVタックル』の超常現象否定派のイメージが強いので、このセリフは言わせていいのかな、とか、そんなことも書きながら考えました。
 できるだけ既存のどんな作品にも似ないこと、と思ってましたが、今、読み返すと、登場人物の背景の入れ方が当時ハマってた『LOST』みたいだし。あと読み合わせの日、久保酎吉さんに「○○みたいですね」と言われ、「しまった、一番似ちゃいけない作品のこと忘れてた」と思い、がく然としました。それが何かはここでは言いませんけど。オリジナリティってやつは難しいです。


--G2は自分でも「脚本によく注文をつける」と言っていますが、この作品についてG2からのオーダーはどんなものでした?

 1回目の台本締め切りが早かったんです。本番の 10カ月前ぐらい。でも、そんなところがプロとしてしっかりしてるな〜と思いました。
 注文をそんなに言われた印象はないんですけど……「選手は褒めて伸ばす」タイプのようで、気分よくやってました。言われたのは主に構成に関わる点で、このシーンはこっちに持ってきた方が効果的とか、そんなことです。それについては「なるほど」と思い、ほとんどのっかりました。助かりました。


--これまでの稽古をご覧になった感想は?

 本読みと、あとひとつのシーンしかまだ見てないですけど、松尾さんの稽古の合間の「豆知識」がすごいです。コックリさんの成り立ちについてとか。あと、片桐さんが着てたシャツが「エッシャー展」で買ったものだったらしいんですが、そのプリントされた絵についての解説とか。
 作家として、どうしても書いた時に描いてたイメージに限定されてしまうんですが、G2さんはそれもわかった上で役者を泳がして、化学反応を待ってる感じがします。僕は野球好きのオッサンなんで、たとえるなら「ヒットはいつでも打てるけど、ホームラン打てる球が来るのを、追い込まれるまで待ってる」って感じですかね。


--劇場での本番で、楽しみにされていることは?

 場面転換。なんとかしてくれるんだろうなーと思って、まったく気をつかわずに「場面は○○に変わる」って書きました。それをどう処理するのか? ってところと、2回目に稽古場に行った時、ある役が変更になってて、「田中美里さんにコレやらすの?」と思ったとこがあります。そこ。
 それから、広島とか盛岡とか、どんな反応なのか見たいです。行けるかどうか分かんないですけど……。



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